バルサミコ

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バルサミコ(酢)について

今では「バルサミコ(酢)」という名前は我が国でも多くの方々が聞かれるようになったと思いますが、その原料や製法、使い方などまだ正しく伝わっていないところがあると思いますのでご説明いたします。

「バルサミコ」とは芳香があるという意味で、バルサモ(香油)が語源と言われています。
今から千年以上前、イタリア北部エミリア・ロマーナ州のモデナから興った熟成酢です。
中世からヨーロッパ貴族や皇帝の間で宝物的調味料として珍重されてきましたが、当初は味を楽しむというより疲労回復や消化剤などの薬として使用され、この地方の各家庭でもつくられて代々受け継がれていきました。

近年になってバルサミコの知名度が高まり、イタリアの食品業界は大量に出来る安価なバルサミコの生産をするようになりました。
現在ではモデナは元よりイタリア以外の国でもバルサミコを生産しています。
そして「バルサミコ」と称するものでも原料も製法も違うものがあり、大きく以下の三つに分類されます。

1. 伝統的バルサミコ酢(ACETO BALSAMICO TRADIZIONALE)

エミリア・ロマーニャ州のモデナとレッジョエミリアにおいて伝統的製法(煮詰めたブドウを木樽に移し替えながら熟成)により12年以上の熟成期間を経て作られるもので、各地域の組合での品質検査及び官能検査をクリアすることが義務付けられます。
原料はブドウのみで、その品種も組合で指定されたものに限られます。
組合で認定された伝統的バルサミコは決められたガラス容器に入れて商品化されます。

2. 伝統的バルサミコに追従するバルサミコ(ACETO BALSAMICO)

原料は伝統的バルサミコと同じブドウのみで、煮詰めたものを木樽に移し、熟成期間だけを短くしたものです。熟成期間は3年、6年、8年など生産者によって様々なものがありますが、TRADIZIONALE(伝統的)の記載はできませんし、伝統的バルサミコの容器を使用することもできません。

3. 工業的バルサミコ

世界中の市場に最も多く流通しているバルサミコで、原料、製法共上記のバルサミコとは全く違うものです。原料はワインビネガーや果実酢などがベースに使われます。そして色と粘性を出す目的でカラメルの添加が一般的です。また酸化防止剤が添加されます。
この製品には熟成期間はありませんので大量生産が可能となり、価格は上記二つのバルサミコに比べると格段に安くなります。上記商品との見極めは原材料表示を見ていただければ分かります。

一つ目、二つ目のバルサミコの原材料表示はブドウのみです。
ブドウが持つプロアントシアニジンと言うポリフェノールを含んでいますので、その抗酸化作用により酸化防止剤の添加が不要です。

バルサミコが発祥した
モデナとは?


    • モデナ大聖堂

    • サン・カタルド墓地

少々バルサミコから外れますがモデナにはいろいろな見どころがある観光地です。

まず、モデナの中心に位置するモデナ大聖堂があります。 ユネスコの世界遺産にも登録されるロマネスク建築の代表作です。モデナ出身のテノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティの葬儀もこの大聖堂で行われました。モデナはフェラーリの本拠地で博物館やショップ、レストランがあります。マセラッティの本社もあります。

また、モデナの人にもあまり知られていませんが、20世紀を代表するイタリアの建築家アルド・ロッシが残したサン・カタルド墓地があります。埋葬する場のロッシの理論を表現したものです。

バルサミコがモデナで
発祥したのはなぜ?

バルサミコがモデナで興り、発展したのには二つの理由があります。

一つはバルサミコの原料となる特産のブドウ、ランブルスコ種、トレッビアーノ種、アンチェロッタ種の主要生産地であることです。
ランブルスコは微発砲の赤ワイン品種としても有名ですが、糖度の高いバルサミコには欠かせない品種で、モデナの土壌、気候、地形などの条件がランブルスコの栽培に適しています。


  • ランブルスコ・グラスパロッサ種

  • トレッビアーノ・モデネーゼ種

  • エミリア・ロマーニャ州

バルサミコの伝統
LA TRADIZIONE

マルピーギはイタリア・モデナにおいて1850年来5世代に亘って伝統的バルサミコの製法を継承してきた企業です。現在のモデナには伝統的バルサミコをつくる80の生産者がいますが、マルピーギはその中心的な存在で、モデナのバルサミコを情熱を持って守り続けています。

かつて、バルサミコと言う名の疑似商品が増えた時、モデナの生産者は生産者組合を創り、バルサミコという名称を守ろうと裁判をしましたが、既に世界に広まっている状況からその願いは叶いませんでした。
しかし、その時の判決でTRADIZIONALE(伝統的)という記載を可能とし、伝統的製法以外でつくられたバルサミコにはその記載は出来ないことで決着しました。

バルサミコの伝統的製法とは

原料は組合で認証したブドウのみで、その他の添加材などは一切使用できません。
製法は、先ずそのブドウを長時間煮詰めます。(煮詰める時間、温度は各生産者によって異なります)
そのブドウの煮汁を冷ましたもの(モストコットと呼ばれ、この状態のものがビンコットあるいはサバと呼ばれる甘味料です)を木樽に入れて熟成させます。

ある期間を経て違う樹種の木樽に移し替えます。その移し替えを何回か繰り返し12年以上の熟成を経過し組合の検査(品質、色、味わいなど)に合格することが条件です。

TRADIZIONALE(伝統的)という記載が許されますが、ワンランク上質のものにはEXTRA VECCHIO(とても古い)という記載が許され、25年の熟成を経ないとこの味わいが出ないと言われています。

組合では商品に熟成年数は入れませんが12年と25年熟成の2つを伝統的バルサミコとして認め、これらは組合によって瓶詰めからラベル貼りまで行い、各生産者に戻し、販売される仕組みになっています。
ビン(100ml)の形状も化粧箱のデザインも統一され、ラベルによって生産者を知ることになります。

木樽から木樽へ移し替える時期は各生産者によって違いますがマルピーギは冬の寒い時期に行います。
木樽の種類(樹種)もいろいろあり、どの樽をどの順番で使用するかは生産者によって異なります。
ブドウを煮詰める温度、時間そして木樽の選び方などから各つくり手によって味わいが変わってきます。

■主な樽の種類
樫 : 代表的な樹種で熟成に適すると言われています
栗 : タンニンを豊富に含み特殊な濃色を与える
桜 : 風味をまろやかにする
桑 : より早くお酢を濃縮させる
タモ: 芳香を与える
その他: ビャクシン、ニセアカシアなど

伝統的バルサミコの容器について


  • マルピーギ 左がEXTRA VECCHIO 25年熟成 右が12年熟成

  • モデナの第二組合の認定商品

  • マルピーギ100年熟成

ボトルデザインはイタリアの有名な工業デザイナー、ジウジアーロによるもので、バルサミコ組合が認証した伝統的バルサミコはこのガラス容器にボトリングされます。
独特のデザインですので、この容器を見たらモデナの伝統的バルサミコであると直ぐに認識できます。
また、このボトルを入れる化粧箱も統一されたデザインで各生産者は箱の表面に貼るシールで識別します。
最近は第二組合という組織がつくられ、そこの化粧箱はデザインが違いますが、ガラスボトルの形状は同じものを使用しています。

マルピーギの伝統的バルサミコ


  • 先祖から伝わる木樽

マルピーギでは組合が認証する2種類のバルサミコの他、熟成期間を50年、80年、100年としたバルサミコを商品化しています。
原料とするブドウはランブルスコ・グラスパロッサ種1/3、トレッビアーノ・モデネーゼ種1/3、トレッビアーノ・ディ・スパジーナ種1/3です。モストコットをつくるために煮詰める時間は90℃で30時間。
木樽の種類(樹種)は樫、桜、桑、栗、アカシア、ビャクシンの6種類を使っています。

未来に向かって
VERSO IL FUTURO

サポローゾ

伝統的バルサミコはつくられる技術と年月から本場イタリアにおいても非常に高価な食材です。
「より多くの方々にバルサミコの魅力を伝えたい」という、マルピーギの願いが6年熟成、8年熟成の商品SAPOROSO(サポローゾ)を生み出したわけですが、このサポローゾには伝統的バルサミコの味わいにいかにしたら近づくかという研究と苦労の過程がありました。

原料は伝統的バルサミコと同じブドウ(ランブルスコ・グラスパロッサ、トレッビアーノ・スパジーナ)とし、単に熟成期間を短くしたのでは近づくことは難しいため、最初の煮詰める時間を伝統的バルサミコの30時間に対し倍以上の70時間にしました。熟成させる木樽はオーク材のみで、移し替えはあえてしません。
そして熟成6年目に、ある味わいに到達することに気づき、そこでステンレスタンクに移し熟成を強制的に止めます。サポローゾの誕生です。

その後、6年の熟成を2年延ばし8年とすることで、より深い味わいに到達することを知り、サポローゾ・リゼルバが誕生しました。

そして今、サポローゾはモストコットを木樽で熟成したバルサミコにマルキーギが自社でつくるワインビネガーを加えたIGP(生産地域表示のEU認証)バルサミコを5%加え、ここに新たな「サポローゾ」が誕生しました。

ホワイトバルサミコ・プレリバート


  • プレリバート

  • プレリバート・リゼルバ

  • プレリバート・ロゼ

  • トレッビアーノ・ディ・スパジーナ

料理の色をそのまま見せる、透明のバルサミコ(ホワイトバルサミコ)は料理人にとって魅力の食材でした。
イタリアでは色のないホワイトバルサミコと称されるものも存在しておりましたが、ワイン酢やりんご酢から作られるものが主流でした。マルピーギはブドウだけを原料とした、ホワイトバルサミコをつくり出し、2006年4月ヴェローナ市で開催されたVINITALY見本市においてプレリバートと命名し紹介しました。

原料はトレッビアーノ・ディ・スパジーナ。ブドウはあくまでもゆっくりと時間をかけて圧搾され、透明で白い液体となり、フィルターにかけて液体と固形物を分離します。
液体はさらに煮込むことなく遠心分離機で濃縮されます。
これがモスト(ブドウ汁)と呼ばれるもので、トネリコ材の樽に入れ5年の間熟成させます。
トネリコ材は良い香りを移し、プレリバートを透明にしてクリーミーなものにしてくれます。

多彩に
バルサミコの展開

新しいバルサミコをつくるマルピーギの挑戦は続きます。
その昔、ブドウよりも安価なリンゴを原料にした庶民のバルサミコをつくっていた時代がありました。
今、その復刻版ともいえるリンゴのバルサミコを発表し、続いてオレンジのバルサミコ、イチジク、サフラン、バニラ、ミントでも作りました。これらはホワイトバルサミコをベースにしているところが多いですが、木樽で熟成させるという製法の過程を守るところはマルピーギの“こだわり”でしょうか。
これらのユニークなバルサミコは伝統的な使い方はありませんので、使う方が独創的な使い方を発見することが楽しみ方です。

日本のお客様の声を聴いていますと、オレンジバルサミコはチキンソテーに合うとか、オールマイティーに使いやすいのはサフランというご意見も聞きます。

バルサミコスプレッド・サポリーナ プレリバート

バルサミコをゼリー状にした商品は最近、フアンのお客様も増えてきています。
これは6年熟成のバルサミコ、サポローゾと5年熟成のホワイトバルサミコ、プレリバートにリンゴの果汁ペクチンを加え半固形にしたものです。
半固形で流れませんので、トッピングして使うと盛り付けの効果もアップします。

バルサミコソルト・サポリート

サポローゾを顆粒状にしたものをハーブソルトに加えたバルサミコソルト・サポリートもございます。